公益社団法人日本口腔インプラント学会 第38回中部支部学術大会市民公開講座
超高齢社会をみすえて】老化と口の疾患に挑戦する再生医療 ―健康長寿のために― 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科硬組織疾患基盤研究センター 住田吉慶

 口腔は消化器系の一部であり,栄養を摂取するための重要な器官です.口腔が健康であれば,摂食や嚥下機能がしっかりと機能し,食物の消化・吸収を円滑に行うことができます.また,栄養摂取だけでなく,味覚といった感覚や構音機能の維持は,食事や会話を楽しむという生活の満足感にも大変重要です.しかしながら,年齢を重ねると歯周組織ばかりか,口の粘膜や周囲の筋肉,唾液を分泌する唾液腺などは萎縮していきます.これら口腔内の器質的な変化は,歯の喪失を含めた歯周病による咀嚼障害や唾液の減少による口腔乾燥などが特徴的です.さらに,免疫老化による歯周病の進行はもとより,口腔癌や骨粗鬆症,シェーグレン症候群など加齢に伴う様々な疾患が生じると,口腔の機能は加速度的に低下します.近年,デンタルインプラント治療の発展により,歯の喪失に対する咀嚼機能の回復技術は飛躍的に向上しています.しかしながら,口腔乾燥症をはじめとした老化に伴う慢性疾患や組織の喪失を伴う疾患に対する治療法は未だ十分ではありません.そのため,低下した口腔機能の回復を根本的に解決するための再生医療研究が,現在歯科医学分野でも盛んに行われています.本講座では,健康長寿の実現に資する口腔領域の再生医療研究の最前線について,老化に伴う難治性口腔疾患の現状を織り交ぜながら御紹介させて頂きます.

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